アヒルからカエルへ

パウリスタ通りでサンパウロ州産業連盟がやってた「アヒルの代金は払わねーぞ(Não Vou Pagar o Pato)」キャンペーンが終わって「カエルを飲み込むはもう嫌だ(Chega de Engolir Sapo)」キャンペーンが始まった。以前どデカイ黄色のアヒルが鎮座していた場所に今はどデカイ緑のカエルが座ってる。

「アヒルの代金を払う」というのはブラジルの諺でちゃんと故事がある。昔ある農夫の妻が男からアヒルを買った。ただし、農夫の妻は代金は体で払うと言った。男はこれに同意して、農夫がいない時間帯にせっせと農夫の妻のところに通って代金を受け取った。ある日農夫の妻はアヒルの代金を払い終えたと判断したが、男はそれには同意しなかった。農夫の妻と男が言い争いをしているところに農夫が帰ってきて、2人は農夫にアヒルの代金のことでモメていると伝えた。農夫は黙って財布から金を出して代金を支払った。と、この話から転じて、他人のケツを拭くという意味なのだ。キャンペーンの内容は反汚職キャンペーンで、我々国民はもう政治家のケツを拭かねーぞという意味だった。

「カエルを飲み込む」というのも諺でこちらは聖書の逸話に由来するらしい。おそらく出エジプト紀のモーゼの脱出の場面だと思うがちゃんと聖書を読んでないのでそんな記述があったのかどうなのかよく知らない。とにかくエジプトが神に呪われ、大量のカエルに襲われたとき、食べ物も何もかもカエルに食べられて王様は毎食カエルを食べるしかなくなった。それで思わず「もうカエルを飲み込むのはたくさんだ」と言ったとか。ここから転じて、カエルを飲み込むというのは嫌なことを我慢するという意味を持っている。数年前に年14パーセントあったブラジルの基本金利は今や6パーセントでインフレもほぼ鎮火したのに、庶民は数百パーセントの金利を取られている。報道によると100レアルを10年貯金すると198レアル3センターボスになるが、100レアルを10年借りると439万4136レアル97センターボスになるそうだ。ビットコイン投資でなく銀行の融資の話である。もうこの銀行の暴利に我慢しないというのがカエルの意味らしい。

2014年に始まったLava Jato作戦の進展もあってアヒルのキャンペーンは大変な盛り上がりを見せ、パウリスタ通りで行われたデモでは多くの人がアヒルの風船を持って抗議活動をしていた。カエルのキャンペーンは果たしてどうなるだろうか。

Yasuyuki Nagai
Advogado japonês em Nagoya