刑事第一審州裁判所訪問

昨年の話になるが、2人の検察官に案内してもらってバハフンダの刑事裁判所を見学させてもらった。

午前中は勾留質問だった。勾留質問の部屋は弁論準備室のような小さな部屋で、裁判官と公選弁護士と検察官が座っていて、午前中には前日の深夜までに逮捕された人が連れて来られるとのことだった。共犯者はカップルみたいに腕を組んだ状態で手錠されているので動きにくそうだ。被疑者が部屋の前まで来ると、弁護士が部屋を出て廊下で被疑者とゴニョゴニョ打ち合わせをしてから、手続きがはじまる。まずは裁判官が被疑者に質問して、それから検察官と弁護士に何か質問がないかを聞く。大抵は何もない。それから、検察官と弁護士が座ったままモニョモニョ意見を言って、勾留するかどうかが決まる。半分程度が勾留になるようで、今日もちょうど半分が勾留されていた。どうやら勾留するつもりのない時に限って、裁判官は「あなたは前に2回も盗みで捕まって、また今回なんだから、勾留してくださいって言ってるみたいなものだよね。もう私としても勾留せざるを得ませんよ」みたいに脅すので、刑務所に行きたくない被疑者は怖がって泣いてしまう。拘置所と刑務所は理論的には別の場所だけれども、現実的には同じ場所のようなのだ。混みすぎてて別の施設にすることができないらしい。勾留をしない場合は定期的な裁判所への出頭や、夜間の外出禁止などの条件を付けていて、その条件は刑事手続が終わるまで継続する。勾留された場合は原則として60日以内に手続がなされることになっていて、勾留されていない場合も3ヶ月ほどで手続が終わるみたいな話だった。

その後、検察官用の食堂で食事をした。検察官の組合で運営しているそうで、ドリンクと食べ放題、デザートに食後のコーヒーまでついて無料である。かなり美味しかったが、検察官によれば「この食堂にはキッチンがなくて、外から運んできてるからイマイチだ」ということだった。

午後には大法廷の陪審裁判を見に行った。陪審裁判の法廷はしっかり傍聴席の設置された大きな部屋だった。正面の壇上に裁判官。同じく壇上の裁判官の右手に検察官。左手に書記官が座っている。また、検察官の右手斜め前には陪審員のボックスがあって、7名の陪審員が座っていて、陪審員と向き合うようにして書記官の左手斜め前に被告人、その隣には弁護人が座っていて、弁護人の前にはテーブルがある。裁判官、検察官、弁護人はそれぞれデザインが違う法服を着ていた。大法廷に入った時、弁護人は座ったままテーブルの上に設置されたマイクを使って弁論していたけど、段々とエキサイトしてきて法廷の中を歩きながら演説を続け、やがて陪審員のボックスの前で弁論していた。ときおり高ぶった弁護人が被告人の前に行って被告人に話しかけるので、被告人がついついそれに答えてしまうことがあって、裁判官が注意をしたところ、弁護人が自分で話しかけたくせに口にチャックの仕草をして「喋っちゃダメだ」と言っていたのが可笑しかった。弁護人の弁論に不満がある時は、検察官は控えめながら弁護人に直接「それは違う」みたいなことを言ったりしていて、時折激しい言い合いが始まることもあった。弁護人は延々と話し続けていたけれど、さらに検察官が反論し、本日中に評議も判決もされることになっているらしい。陪審員は手続きが終わるまで裁判所にカンズメなので、夜半まで手続きを続けるみたいだった。

弁論の途中で大法廷を離れて、小法廷の手続きを見に行った。金曜日だから事件が少ないみたいだった。小法廷は傍聴席もなく、ブラジルの民事の法廷とほぼ同じサイズの小さな部屋だ。手続きはまず裁判官、検察官、弁護人が3人でマジックミラーの部屋に行って、マジックミラーの前を被告人とダミーの人たちが通るのを見て、証人予定者が被告人を見分けられるか確認するところから始まる。一般の証人は被告人が在廷しない状態で証言し、被告人は別室でカメラで証言を確認する。警察官は被告人が在廷の状態で証言する。弁護側証人も同様のようだ。尋問は裁判官がまず聞いて、検察官と弁護人に質問はないか確認する。ほぼ勾留質問と同じ流れだった。自白事件でも情状証人はなし(これは確認してないので、たまたまかもしれない)。2件めに見た事件は共犯の否認事件だったけど、3時間ほどで、7、8人の証人の尋問と、2人の被告人の被告人質問を終えてしまった。その段階ですでに7時くらいだったけど、今日中に判決までやってしまうということだった。2人の共犯者のうち1人は私選弁護人を付けているようで、2人組の弁護人が熱心に質問をしていた。私選弁護人は口頭で弁論していて、裁判所は証言と同じように弁論を録画していた。ツッコミたくなる場面もけっこうあったけど、日本だと3、4か月かかりそうな手続きが、3時間ちょっとで終わるのを見て、身柄事件の処理はこうじゃないとダメだよなと思った。

Yasuyuki Nagai
Advogado japonês em Nagoya