当職がブラジル滞在中に原告のひとりとして提起し、帰国後は他の原告の代理人も兼ねて訴訟追行してきた在外国民審査権訴訟について、最高裁判所大法廷は、2022年5月25日、判決の言い渡しを行った。この訴訟では地位確認又は違法確認の請求と国賠請求を行っていたところ、第1審は国賠請求を認容し、その余の請求を却下、控訴審は違法確認請求を認容し、地位確認は却下、国賠請求は棄却とし、いずれも在外国民に審査権を認めないことは憲法に違反すると判断していた。
最高裁大法廷は、15人の裁判官全員一致の判断で、国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは憲法に違反するとした。違法確認請求と国賠請求の両方を認容し、地位確認については適法な訴訟として請求棄却すべきで、不適法却下とした原審の判断は違法であるとしたものの、却下から棄却への不利益変更を避けるため原審の却下の判断を維持した。
この判決は1947年に日本国憲法が施行され、最高裁が創設されてから11番目の法令違憲判決にあたる。また、違憲確認という訴訟類型をはじめて認容した控訴審の判断を維持すると共に、控訴審が棄却した国賠も認容し、救済の門戸を押し広げた。立法に対する憲法的統制を強めた2005年在外国民審査権訴訟大法廷判決以降の流れを決定的にするもので、今後繰り返し引用されるに違いない歴史的判決である。
判決宣告の翌5月26日の主要各日刊紙朝刊は1面のトップ記事でこの判決について報じた。
共に訴訟を追行した代理人、共に訴訟を提起した原告、意見書を作成していただいた研究者の先生方、訴訟についてご意見をお伺いした実務家・研究者の先生方、訴訟について報道していただいた記者の方々、訴訟費用等を支援してくださった方々、あたたかい声をかけてくださった方々など、多くの方の尽力によって大変良い判決を得ることができたことに感謝したい。
また、国会が投票しやすい在外国民審査制度をすみやかに創設することを期待したい。
Yasuyuki Nagai
Advogado japonês em Nagoya