もう一昨年の2018年12月の話であるが、T裁判官の好意でバハフンダの刑事裁判所の勾留質問(AUDIÊNCIA DE CUSTÓDIA)手続を見学させて頂いた。管轄内で午前中に逮捕された者はその日の午後に、午後に逮捕された者は翌日の午前中にこの裁判所に連れてこられて裁判官の面前で勾留質問を受ける。ブラジルの勾留(Prisão preventiva)は直訳すると予防拘禁で、日本と違ってその名の通り他の犯罪が行われることを予防するための身体拘束である。勾留質問手続は裁判官のほか、検察官と弁護士が立ち会って行われる。裁判官は人定事項のほかに逮捕時の暴行の有無、同居人や養育費の支払い状況を確認する。検察官は補充質問で前科を確認する。弁護士は概ねその日の当番の公共弁護庁の国選弁護官が担当し、時折私選弁護人を付けている人もいる。途中逮捕時に警察官による暴行があったと主張する人がいて、裁判官によって身体検査(Exame de corpo de delito)が命じられた。辞書にはCorpo de delitoの意味は罪体と書いてあるし、罪体を意味するラテン語はcorpus delictiだ。Exame de corpo de delitoを直訳すると罪体検査となるので、てっきり勾留理由開示のことかと思っていた。しかし、Corpo de delitoの意味は罪体でもExame de corpo de delitとなると捜査官による被逮捕者への暴行の有無を調べる鑑定医による身体検査を意味するようだ。実際に手続を見せてもらってから裁判官の説明を聞いて非常に良く分かった。