ブラジル難民法上の凶悪犯

ブラジルの難民法(LEI Nº 9.474, DE 22 DE JULHO DE 1997.)を見ていたら、「crime hediondoを犯したもの」は難民としての地位が与えられないという規定があった(第3条3号)。同じところに、人道に対する罪とか、戦争に対する罪が列挙されているから穏やかではない。このcrime hediondoは1988年ブラジル憲法第5条43号に登場する用語で、凶悪犯という意味である。

XLIII – a lei considerará crimes inafiançáveis e insuscetíveis de graça ou anistia a prática da tortura , o tráfico ilícito de entorpecentes e drogas afins, o terrorismo e os definidos como crimes hediondos, por eles respondendo os mandantes, os executores e os que, podendo evitá-los, se omitirem;
四三 拷問の実行、麻薬又は類似の薬物の違法取引、テロリズム及び凶悪犯として定義された行為を、法律によって、保釈の適用を受けず、かつ、恩赦又は特赦となることのない犯罪とみなし、教唆犯、実行犯及び過失犯はその責を負う。

この憲法の規定に基づき、1990年7月25日付法律第8072号(LEI Nº 8.072, DE 25 DE JULHO DE 1990.)は殺人、強姦、強盗などのcrime hediondo(凶悪犯)を定義している。難民としての保護を受けることができない者は、こと刑法犯に関しては保釈の適用もないような凶悪犯に限定されているわけだ。

Yasuyuki NAGAI
Advogado japonês em Nagoya

事務所を移転しました

 事務所を移転いたしました。新しい住所は以下のとおりです。

〒460-0002 名古屋市中区丸の内2-1-30
 丸の内オフィスフォーラム601
永井康之法律事務所

 電話番号及びFAX番号は従来のとおりです。
 地下鉄鶴舞線・桜通線丸の内駅1番出口横、伏見通りと京町通りの交差点にあるビルの6階になります。名古屋駅からいらっしゃる場合は地下鉄桜通線で丸の内駅までお越し頂いて1番出口から出ていただくか、名古屋駅バスターミナル8番乗り場で幹名駅1系統又は名駅14系統に乗車いただいて、愛知県図書館駅で降車し、右方向に直進いただいて伏見通りを渡った後、右折ください。
 今後もどうぞよろしくお願いします。

Yasuyuki NAGAI
Advogado japonês em Nagoya

クアレンテーナ

新型コロナウイルスに関するポルトガル語の報道にquarentenaという言葉が良く出てくる。40日間という意味のこの言葉は、ここでは検疫期間という意味で使われる。17世紀のヴェネツィアは、伝染病の拡大を避けるため、入港した船乗りたちに40日間の検疫のための隔離を義務づけた。このため、40日間という言葉がそのまま検疫期間を意味するようになった。ヴェネツィアの検疫期間が40日間とされたのはキリスト教の四旬節(イースターの前の40日間。イエスが荒野で修行した40日間にちなみ、イエスを偲んで節制する)に由来し、ポルトガル語のquarentenaには四旬節という意味もあるようだ。

新型コロナウイルスに対する措置として行われているquarentenaは2020年2月6日付法律第13979号(LEI Nº 13.979, DE 6 DE FEVEREIRO DE 2020)に定められている。ブラジルで新型コロナウイルスの感染がはじめて確認されたのは2020年2月26日のことだから、最初の患者が確認されるよりも前に、迅速な審理によって法律が制定されたことになる。法律の冒頭部分には次のように書かれている。

Dispõe sobre as medidas para enfrentamento da emergência de saúde pública de importância internacional decorrente do coronavírus responsável pelo surto de 2019.(2019年にコロナウイルスが引き起こした国際的に重要な公衆衛生上の緊急事態に対処するための措置を定める)

quarentenaについては2条に定義規定が置かれている。

Art. 2º Para fins do disposto nesta Lei, considera-se:
第2条 この法律においては以下とみなす。
I – isolamento: separação de pessoas doentes ou contaminadas, ou de bagagens, meios de transporte, mercadorias ou encomendas postais afetadas, de outros, de maneira a evitar a contaminação ou a propagação do coronavírus; e
一 隔離:発症し又は感染した者、感染した荷物、交通手段、商品又は郵便小包の他からのコロナウイルスの伝染または増殖を回避するような方法による分別
II – quarentena: restrição de atividades ou separação de pessoas suspeitas de contaminação das pessoas que não estejam doentes, ou de bagagens, contêineres, animais, meios de transporte ou mercadorias suspeitos de contaminação, de maneira a evitar a possível contaminação ou a propagação do coronavírus.
二 停留:感染の疑いのある人の活動制限又は他の人からの分別又は感染の疑いのある荷物、コンテナ、動物、交通手段若しくは商品のコロナウイルスの伝染又は増殖を回避するような方法による分別

以上のように、この法律は、 isolamento を感染した者の隔離、 quarentena を感染した疑いがある者の停留と定義している。日本の検疫法においても感染した者と感染した疑いがある者を区分して用語を使い分けていることから、隔離と停留という訳語はここから借用した。

ただし、ブラジルのニュースなどでのquarentenaの一般的な用語法を見ると、文脈によって、ロックダウン、休校期間、外出自粛、自主隔離など様々な意味で用いられているようだ。したがって、上記のような法令用語であることを踏まえつつも、翻訳の際には実際の内容を踏まえて用語を選択する必要がある。

Yasuyuki NAGAI
Advogado japonês em Nagoya